ばらんざっく

好きなモノを好きなように書き連ねる

尋ねる

――午後11時

しだいに外が明るくなってきたのに気がついて、時刻を確認した澪は首を傾げた。
「上にいる。」
話しかけようとして逆に声を掛けられて、澪は反射的に視線を上へと向けようとする。
「おいっ!暗視切れ!遮光!」
上を向きかけた頭を大化に押さえつけられて慌てて澪はレンズのタイプを切り替えた。
ようやく恐る恐る上を向くと先ほどまでの星空は見当たらず、光る物体のみが視界に入る。
音もなく上空に現れたそれは、建物全体を覆うほどに巨大だった。
それに吸い込まれて行くように小さな生命体はふわふわと宙に浮いては消えて行く。

時間にして数分。あまりの光景に随分と長い間それを見ていたような感覚に隊員たちは襲われた。
「今の、なんだったんだ?」
ようやくそれだけ言うと、新橋は既になにもいなくなった上空を不思議そうに見上げた。
「母体が迎えにきた?ということになるか、な?」
同じように上を向いて堀が呟く。
「サンプルはあるから、もう少し調べてみる価値はあるかもしれない。あんなの初めてだ。」
研究意欲に燃える堀は生命体の残したわずかな手がかりを集め始める。
「程々にしてくださいよ。ブランクミッションなんですから。」
特に何もすることがなかった事例の場合、SKYではこのように呼んだ。誰が言い始めたのかは定かではないが、いつの間にか定着する程にはブランクミッションが多いということになる。
聞こえているのかいないのか、堀の動きが止まることはなかったので、残りの隊員たちは一旦撤収を決めた。

――数日後

「つまり、あの生命体は希に見る知能型だったということが今回証明されました。しかも集合体として変形も移動もできる!」
興奮しながら力説する堀に対して隊員たちはどこかあきれ顔である。
「大化!また来るかもしれないんだぞ!」
「また来た時に考えましょう。あと、研究対象にしたい溢れんばかりの気持ちで俺に近づかないでください。」
心底嫌そうに大化は詰め寄ってきた堀から身を引く。生物対象となると元研究員である堀の情熱はなかなか収まらない。
「なっ、俺はそんな風に考えたことはないぞ!そりゃ確かに…」
「で、観察はあれから?」
堀の話を遮って大化は平井に話を振る。振られた平井は眼鏡のブリッジを押し上げながら口の端をあげる。
「あれからもなにも、今回のは明らかに観察のミスですよ。オートチェックに頼り切って機械じゃ判断しづらい飛来物を判別出来なかった。ただの怠慢です。」
口調とは裏腹に平井はいつになく嬉しそうに語っている。
「お前のそういう所怖いわー。堀もそうだけど、歴とした職業病だよな。」
新橋の苦虫を噛み潰した様な表情と一言で平井は我に返る。
「失礼な。なんですか、職業病って。」
「相手のミスや弱点見つけて喜ぶなんてのは、情報班くらいなもんだって事だよ。」
「……今度新橋さんの事徹底的に調べておきますから。」
「やめろ。」
二人の間に静かな戦いが勃発した。
少し離れたところでやり取りを見ていた澪は、考えてみれば個性的な人材が集まっているのだと改めて実感したのだった。