ばらんざっく

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SKY

やや時間を押しながら行われた結成式からようやく開放された隊員たちは、前もって渡された辞令に従って配属先の司令室がある場所へと各々移動を始めた。
この結成式は本部で行われていたため、EARTHやAIRの隊員たちはここから移動するために飛行ゲートへと向かう。一方、SKY隊員はそのまま建物の最 上階へと専用のエレベーターで移動をする。各関連施設と併設する防衛隊日本支部本部は、空に向かって巨大な煙突がそびえ立つ構造で、専用エレベーターでは 最上階の200階まで僅か10秒で到着する。

「揃いましたね。」
先ほどの結成式で3チームの総代表として紹介されていた女性、それがここの隊長北島要である。隊員は隊長を含め総勢9名。男性が6名に、女性が3名、3チームの中では一番男性が多い。

北島が簡単に自己紹介を済ませ、他の隊員たちも同様に自己紹介を終える。規則と部屋割りの説明も終わると時刻は丁度12時となった。
「では、少し早いけれど本日はこれで解散とします。各自明日に備えて準備を行ってください。明朝は7時までに司令室に集合すること。それでは。」
北島は用件だけ伝えるとさっさと司令室を出て行ってしまった。この他にもやることが山のようにあるのだろう。
残されたメンバーは暫し互いの様子を伺うようにしてその場に立ち尽くしていたが、やがて一人の隊員が口を開く。
「えーっと、掛井副隊長ってなんだかキャプテンって感じがしますよね。」
場を和ませようとしたのか、女性隊員の一人である宮下春奈が突然そんなことを言い出した。
どこからともなく納得の賛同があがる。掛井葉月、穏やかな響きの名前に似合わずがっしりとした体格が頼りがいのある雰囲気を醸し出していた。
「キャプテンって呼んでも構いませんか?」
こう提案されて、掛井の反論もないままにそれは決定事項となる。しかし、3日後にはそんな事を決めたことすらその場に居た全員が忘れていることになろうとは誰も思わない。
「そういえば。」
ひとしきりキャプテンの話題で盛り上がった後、司令室内に残っているメンバーを春奈の隣に立っていた男、草加雪冬が数え始める。
「一人足りない……かな?」
その言葉につられて改めて人数を確認するメンバー。
「隊長を除けばここにいるのは全員で8人のはずですよね。」
男性メンバー内では一番年下の平井尚が首を傾げた。
「彼、えっと……名前はなんて言ってたっけ?」
ほんの数分前に初めて顔を合わせた者同士が殆どである。まだ名前と顔が一致していないのは当然だった。雪冬はさらに首を傾げる。
「さあな。第一、今ここにいる全員の名前だって俺はわからねえ。いっそのこともう一度全員が名前を言うしか無い。というか、言え。」
どことなく口調の悪さが目立つ新橋功太は、半ば強制的に提案をする。反論する大した理由もないので、それに従うメンバー。再び先ほどの自己紹介の様な 異様な雰囲気が場を占めた。

「で?これでいない奴の名前なんかわかるのか?」
提案した張本人でありながら更にメンバーに疑問をぶつけてくる新橋。残りのメンバーの顔がやや引きつる。
「そう言うことはやる前に言ってくださいよ。」
眼鏡をかけ直しながら、聞こえるか聞こえないかぐらいで平井は呟いた。
「えっと、間違いなく今居ないのは南川隊員です。」
小さく手を挙げた春奈がどこか申し訳なさそうな表情できっぱりと断言した。
「その断言する自信はどこに?」
納得するメンバーをよそに、新橋が未だ疑いの眼差しを向ける。彼はただ思い出せないだけなのだ。
「それは、その、一時期訓練校で一緒だったので……」
「だったらそれを先に言えっつーの。」
「すみません、なんかタイミング逃しちゃって。」
新橋の言葉に春奈は小さく謝った。
「南川か……、いつの間に部屋に行ったんだ?なんか掴みにくい奴だな。」
ため息混じりに腰掛けていたイスを揺らす堀丈斗。
「ま、外見と内面が同じとも限らないからな。余りそう言う風に言ってやるな。」
静かに、諭すように掛井は言う。堀と同じようなことを思っていたのか、メンバーはそれを聞いて顔を見合わすと曖昧な頷きをかわしたのだった。

 

「南川隊員って、どんな感じの方なんですか?」
自室へ戻る時、真中澪は心配そうに春奈に尋ねた。チーム内最年少の彼女は何もかもが不安そうである。
「ん?」
「あ、すみません、訓練校でご一緒だったってさっき……。」
「ああ、ほんの1年ちょっとだけどね。そっか、澪は大化とペアだったね。」
うーん、と、春奈は思い出を探るように宙を睨む。
「訓練校出てから3年だけど、なんかちょっと雰囲気変わったかな。」
「変わった?」
「うん、前からあまり他人を寄せ付けない感じはあったけど、ちょっとそれが酷くなってる感じ?ごめん、あんまり参考にならないね。」
申し訳なさそうにはにかむ春奈。澪はさらに申し訳なさそうに首を横に振った。
「とはいえ、そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。多分。」
「多分?」
「大丈夫、大丈夫。悪いやつじゃないって。」
笑顔で春菜は言うが、澪の不安はあまり取り除けたようではなかった。